地震や台風など多発する自然災害に、中小企業者はどう備えるか?

日本は気象条件や地勢条件などが絡み合い、自然災害が起きやすい「災害大国」と呼ばれています。特に20113月に発生した東日本大震災において、建物が倒壊したり津波に飲み込まれたりする映像は、今なお人々の記憶に強く焼き付いていることでしょう。中小企業者が自然災害による被害を最小限に抑え、長期的に事業を続けるためには、適切な対策を行う必要があります。

自然災害は他人事ではない

一昔前に比べ、日本の自然災害は増加傾向にあります。例えば大雨について、年間で日降水量が200mm以上となる日数を「1901年から1930年」と「1990年から2019年」で比較すると、前者に比べ後者は約1.7倍に増えています。

20199月、東日本に大きな爪痕を残した「令和元年東日本台風(台風19号)」や、20198月に九州北部を中心に発生した「令和元年8月の前線に伴う大雨」では、人命が脅かされただけでなく、設備の浸水やライフラインの寸断など、甚大な被害をもたらしました。大雨に比例して土砂災害も増えており、2018年には過去最多の3,459件を記録しています。

 

また、地震に関しても発生回数は世界全体の18.5%20042013年)と高い割合を占めています。日本の国土面積は世界のわずか0.25%という点を鑑みると、いかに日本が地震の多い国であるかが読み取れるでしょう。今後想定される地震について、関東~九州の広い範囲で激しい揺れと津波が発生すると考えられている「南海トラフ地震」と、首都中枢機能への多大な影響が懸念される「首都直下地震」は、30年以内に発生する確率が70%という予測もあります。そのため、地震だけでなく火災などの二次災害まで見越した対策が求められます。

 データ参照元:国土交通省「国土交通白書2020」より

自然災害の影響を抑えるには、BCPが有効

BCPBusiness Continuity Plan)をご存じでしょうか。「事業継続計画」と訳され、緊急時の損害を最小限に抑え事業を途切れずに継続させる、または途切れたとしても早期復旧を図るためのものです。各種災害に限らず、中小企業者が不慮の事故や病気で経営に携わることができなくなった場合にも、BCPは有効です。

先に挙げた東日本大震災では多くの中小企業者でヒト・モノが失われ、廃業に追い込まれました。従業員や設備は無事でも、復旧に時間を要したために製品・サービスの供給が遅れ、機会損失につながるケースもあります。つまりBCP策定においては「いかに短期間で緊急事態から脱し、平常運転に戻れるか」が重要なのです。

 

 BCP策定のポイント>

1)何のためにBCPを策定するのかを念頭に置く(従業員の安全を守るため、経営を維持するため、卸先への供給を断たないため

2)災害の種類ごとに想定される事態と対策を考える(地震、豪雨、豪雪、津波、火事

 【例】震度6強の地震発生で想定される影響

 ・什器の移動や転倒

 ・従業員の負傷

 ・浸水による機械設備の故障

 ・重要な顧客データの破損

 ・火災による二次災害

      

 ・従業員の安全をどのように確保するか?

 ・売上は維持できるか?どれほどの機会損失が予想されるか?

 ・流動資金はどれくらい確保できるか?

 ・現在加入の共済・保険で損害額を補填できるか?

 BCPが役立つのは、緊急時だけではありません。策定のために自社の経営状況を今一度見直すことで、業務のムダの洗い出しにもつながります。

 ■万が一に備えてのリスクヘッジ、共済・保険の活用・見直し

前項では事前準備や対策について触れましたが、いくら入念に立てた計画でも、いざ災害が起きるとシミュレーション通りにはいかないものです。そのため、「被害は多かれ少なかれ発生する」という意識を持つことも大切です。

とはいえ共済・保険は、「とりあえず何かしらに入っておけば安心」というわけではありません。せっかく加入していても、適用外の災害だったためにお金が支払われなかったという事例も決して珍しくないからです。自然災害に見舞われた後で慌てないよう、現在利用している、あるいはこれから利用予定のサービスの内容を確認しておきましょう。

 

自然災害による被害と聞くと、建物の損壊や設備・商品の破損というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし実際に自然災害が起きると、モノだけでなく休業期間中の粗利益も失われてしまいます。

共済の中には、建物の損壊により事業が停止した場合に共済金が支払われる「休業対応応援共済」というものがあります。従業員の給与や設備のリース代などに充てられるので、営業再開までの大きな手助けとなるでしょう。

共済・保険選びにおいて重要なのは、自社の拠点で想定される災害を予測し、必要な補償を想定しておくことです。自社で判断に迷った場合は、最寄りの商工会や商工会議所に相談するのもおすすめです。

 まとめ

自然災害そのものの回避は困難です。ゆえに、日頃から組織内でBCPを浸透させたうえで、自社に合った共済・保険に加入することが、スムーズな事業再開に結び付ける有効な手段と言えます。
 また、共済に関するご相談は当サイトのお問い合わせフォームでも受け付けておりますので、興味のある経営者様・ご担当者様は、ぜひお問い合わせください。