河川から離れた地域でも、水災への対策は必要か?

近年、台風や集中豪雨などの水災による被害が増えています。20207月に九州・中部地方に甚大な影響をもたらした「令和27月豪雨」や、20199月、関東上陸時に過去最大級の勢力と観測された「台風15号」、同月に記録的な大雨となり東日本に大きな爪痕を残した「台風19号」などは、テレビやネットニュースでも大々的に報道されました。河川は全国に点在するため、日本全体が水災の対象地域であると言えるでしょう。一方で、「自社の社屋や工場は河川から離れた場所にあるので影響ないのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、水災が被害を及ぼす範囲や事業に与える影響について解説します。

■河川から離れていても被害は発生している

雨が多い我が国では、20092018年の10年間に、約97%(※)の市区町村で水災が発生しています。全国にある1,741市区町村(平成30年末)のうち、20092018年の間で一度も河川の氾濫などによる水災が起きていないのは、わずか48市区町村(2.8%)です。先に挙げた令和27月豪雨では、九州南部・北部、東海など多くの地点で244872時間あたりの降水量が統計開始以降で最大となりました。そして国や県が管理する河川などで次々に氾濫が発生し、多くの死者を出しています。

水災と聞くと、「堤防が決壊して、水が建物や道路を飲み込む」といったイメージを思い浮かべる方は多いでしょう。しかしながら実際は、水路やマンホールなどから水があふれて浸水することもあり、これを「内水氾濫」と言います。大雨で河川の水位が上がると水路から排水ができなくなり、あふれ出てしまうのです。水が溜まりやすい低地や、土地が狭いゆえに地下に部屋を設けている狭小地などの場合、影響はさらに大きくなるでしょう。

「自治体が定めている浸水エリア外なら心配はない」と楽観視している方も、注意が必要です。各自治体では自然災害による被害規模を予測し、地図化するハザードマップを作成しています。ところが想定を超える被害が発生するケースもあり、ハザードマップの見直しが必要との意見も出ています。すなわち、ハザードマップは災害時の指針にはなっても、情報を鵜呑みにするのはかえって危険な可能性もあるということです。

 

※政府広報オンライン・暮らしに役立つ情報より引用

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201507/1.html

■水災が発生したら、どのように行動すべきか

災害においてまず優先すべきは、従業員の命です。作業環境さえ整っていれば会社以外でも仕事ができる場合は、交通機関の混乱による帰宅困難などを避けるため、テレワークを実施するとよいでしょう。どうしても出勤しなければ仕事にならない場合は、出勤のタイミングをずらす、退勤時間を早めるなどが有効です。

水災が発生したそのときに影響はなくとも、警戒を怠ってはなりません。2015年に起きた鬼怒川氾濫では、決壊から12時間後には、約10km離れた常総市役所まで洪水が到達したという事例があります。河川からの距離だけではなく、土地の高低を確認したうえで避難の判断をしてください。

水災時は土のうや止水板を使った建物への浸水対策は必須ですが、自社が浸水してしまった場合を見据え、復旧までにかかるであろう期間をあらかじめ割り出しておきましょう。水災は直接的な被害による影響が残る期間が長い分、「事務所や設備の復旧が完了し、通常どおりに事業ができるまでの時間」と、「通常どおりではないが、必要な事業ができるまでの時間」の2パターンを算出するのがコツです。

ただし、復旧とは自社だけを指すものとは限りません。取引先も水災に遭った場合は、その取引先が元通りにならなければ“通常どおり”に事業を進めることはできないので取引先の状況を確認することも重要です。

■日頃からできる準備とは…万が一に備えて共済活用を

突発的に起こる地震や火災とは異なり、台風や集中豪雨の場合はいつ頃自社に到達するのか事前にある程度把握できるため、対策も立てやすくなります。基本的な内容としては、避難場所の確認、非常食の確保、指示系統の確立、バックアップ施設の準備などが挙げられます。また、いざというときにすぐ事業を再開できるよう、仕入れ先や納入ルートを複数用意したり、水災が起きやすい時期には資材を多めに確保しておくことも大切です。これらをBCP(事業継続計画)の水災対策の項目に盛り込み、日頃から従業員に浸透させておきましょう。

とはいえ、いくら万全の備えをしても被害そのものをなくすことは困難です。設備の買い替えや建物の補修をする際、資金がなければ再起までの時間が長引いてしまいます。

あらかじめ共済を契約しておけば、自然災害による影響を受けた際に手厚い補償を受けられます。共済の種類やプランによって内容は様々ですが、「総合火災共済契約」では台風・豪雨・洪水・高潮・土砂崩れといった一通りの水災に対応しています。万が一の場合も全社一丸となって再興を目指す手助けになるでしょう。

■まとめ

島国かつ河川の多い日本において、水災は身近に起こりうる自然災害のひとつです。今回お伝えしたとおり、例え自社が河川から離れた場所にあったとしても、将来的に水災の被害を被る可能性は決してゼロではありません。水災の知識や対策を考えることは、今後、事業所を増設したり移転したりする際にも役立つでしょう。

 前項でご紹介した総合火災共済契約など、水災の補償を受けられる共済について知りたい方は、当サイトのお問い合わせフォームでお気軽にご相談ください。