経営者がけがや病気で働けなくなったとき、どうするか?

会社を継続させていくためには、あらゆる緊急事態に備える必要があります。地震や台風、大雨といった自然災害だけではありません。実際、全世界で今なお猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がここまで長期化・深刻化することを、発生当初に誰が予想できたでしょうか。
 企業にとって各種災害への対策は不可欠ですが、経営者はけがや病気など自分自身に降りかかる恐れのある災難にも注意を向ける必要があります。いざというときに役員や従業員が迅速に行動できるようにするための準備も、経営者の重要な仕事です。
 今回は、けがや病気の際にかかる費用や、補償を受けられる共済制度についてご紹介します。

■ある日突然、経営者が働けなくなってしまったら…。 

経営者がけがや病気に見舞われることを事前に予測することは不可能です。だからといって「そのときになったら考える」とはいかないのもまた事実です。特に、従業員数が少なく、一人ひとりの裁量や役割が大きい中小企業者にとって経営者の存在は非常に大きなもので、離脱による影響は計り知れません。ひとたびトップの意思決定が途切れてしまうと、進行中の事業が足踏みになったり、そこから従業員に不安が広がったりするリスクもあります。迅速かつ的確な経営判断は経験に基づく部分も大きいため、経営者の代わりは誰にでも務まるものではないのです。
 ゆえに、経営者に万が一の事態が訪れた場合を想定して、そのときは誰が代わりを担うかをあらかじめ決めておく必要があります。家族経営の場合はご子息・ご息女などに委ねようとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、他の従業員の命運を握っている以上、本当に有能であるか、自分の代理を果たせるかを、冷静に見極めるべきです。また、自分の代理になる人が決まった時点で、社内だけでなく取引先や金融機関、税理士など社外の関係者に伝えておくことも、取引をスムーズに続けるためには重要でしょう。

■入院したらどれくらいのお金がかかるのか? 

公益財団法人生命保険文化センターが公表している「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》」によると、入院経験がある人のうち、直近の入院に伴う自己負担費用の平均額は208,0001という、安くはない数字が出ています。

<入院時の自己負担費用の上位>
1020万円未満…30.6
510万円未満…25.7
2030万円未満…13.3
3050万円未満…11.7
50100万円未満…8.4

 個室や2人室など入院費の高い部屋を利用したり、治療費の高い特定部位のがんで入院したりすると、当然入院費の合計は高くなる傾向にあります。
 なお、1日あたりの自己負担費用は平均で23,3002です。ベッド代以外にも様々な負担がかかること、また入院が長引く可能性もあることを踏まえると、自己負担額を減らすためにも共済には加入しておくといいとと言えるでしょう。

 

 <逸失収入とBCP
 逸失収入とは、本来であれば得られたはずなのに、怪我や病気のせいで機会損失となった収入を指します。生命保険文化センターの同調査では、入院経験がある人の、直近の入院における逸失収入があった割合は21.6%です(「逸失収入がない」が59.2%、「わからない」が19.2%)。もともと予定していた大事な商談やプロジェクトに穴を空けてしまった場合、機会損失になるだけでなく企業としての信頼低下にもつながりかねません。
 入院中にご自身の意識があり経営指揮がつつがなくできるのであればよいですが、けがや病気の程度によっては意識を失ったり会話が困難になったりする可能性も考えられます。第1回目のコラムでもご紹介したBCP(事業継続計画)の策定では、「経営者が事故や病気に見舞われた場合」の項目を盛り込みましょう。いざというときに経営判断や意思決定が途切れないようにすることが大切です。

■怪我や病気にまつわる共済のご紹介 

前項では、けがや病気のリスクヘッジの重要性についてご説明しました。まだ何の対策も取っていないという経営者は、共済の加入もご検討ください。とはいえ、「共済は種類が多いし似たような名前が多くて、どれを選んだらいいのかわからない…」という方も多いでしょう。

以下に、けがや病気にまつわる共済の一例をご案内します。

 

<医療総合保障共済>
 日常生活に限らず、海外旅行中のけがや病気の入院保障も受けられます。「入院一日目から保障される」「万が一死亡した際は最大で200万円の葬祭費用の実費が支払われる」など、手厚い内容が特徴です。がんによる入院・手術の場合、プランによっては医療共済とがん共済の両方が適用されるので、もしものときに大いに役立つ共済と言えます。

 

<傷害総合保障共済、交通事故傷害共済>
 主にけがによる入院や通院、手術などの治療を受けた際に適用される共済です(交通事故傷害共済の場合は、交通事故などによるけが)。事故は予測が難しいものだからこそ、慎重すぎるくらいの対策が求められます。これらの共済に加入しておけば、突然の場合でも治療費の心配が少なくなって治療に専念できるでしょう。

 

<生命傷害共済>
 けがや病気で亡くなったり、後遺症が残ったりした際に共済金が支払われます。後者の状況に陥ると、命は助かっても経営者として事業に携わるのは難しくなっているでしょう。そんなときに必要となるのは、まとまったお金です。手頃な掛け金で幅広い保障が得られますので、万が一の場合の備えとして、生命傷害共済は有効です。

 

<所得補償共済>
 けがや病気での入院により働けなくなった場合の所得が補償されます。労働収入が得られなくなった際の備えとして、ご本人はもちろんご家族も安心できる共済としておすすめです。死亡・入院のどちらにも対応していますので、いざというときに大きな手助けとなります。
 各共済の内容についてもっと詳しく知りたい方は、当サイトのお問い合わせフォームからご連絡ください。

■まとめ 

従業員や家族を守る立場として、経営者は様々な事態を想定し、備えなければなりません。共済への加入は、従業員や会社への損害を最小限に抑えるための前向きな投資と考えましょう。
 当サイトでは事故や病気をはじめ、自然災害や損害賠償リスクなど、中小企業者をサポートする共済をご案内しています。興味をお持ちの方はぜひご相談ください。

 

1令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》:P17.3)直 近の入院時の自己負担費用-〈図表II6〉 直近の入院時の自己負担費用
 ※2令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》:P18.3)直近の入院時の自己負担費用-〈図表II7〉直近の入院時の1日あたりの自己負担費用
 ※1・※2のいずれも治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。