従業員がテレワーク中にけがをしたら、どうすればいい?

度重なる緊急事態宣言を経て、新しい勤務形態としてテレワークが普及しました。「満員電車に乗る負担がなくなる」、「出退勤の移動時間が省ける」等のメリットもある一方で、勤務実態が見えにくいため不安を感じている経営者様も多いのではないでしょうか。

その中で“テレワークにおける事故”も、今後の懸念事項のひとつになるかと思います。企業側がどこまで責任を負う必要があるのか、労働災害として適用されるのか等、理解しておくべきポイントがあります。

■テレワーク中のけがは、どのようなものが想定される?

労働災害は主に、通勤により被った負傷や病気、障害等を指す「通勤災害」と、業務そのものが原因で被った負傷や病気、障害等を指す「業務災害」に分けられます。

一般的に通勤災害が適用されるのは“合理的な移動手段・経路を使用した場合”であり、寄り道の最中や仕事帰りの飲み会で負ったけがは対象外です。企業が就業場所に自宅を指定しているにもかかわらず、従業員がコワーキングスペース等に行こうとして、その道中でけがをした場合も、労災として認められません。

また自宅で作業するとなると、ついプライベートとの線引きがあいまいになりがちです。しかし当然のことながら、就業時間中であっても育児や家事に起因した傷病は業務災害にはならないので要注意です。事前に従業員への周知を行うべきでしょう。

 

<テレワークにおいて想定される労災の一例>

・トイレに行き、戻る際に椅子に座り損ねて転倒した

・上司の指示のもと、自宅で書類を作成しようとしたら紙で指を切ってしまった

 

業務災害にあたるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2点を確認します。こちらに関しては後ほど詳しくご説明します。

■テレワークに関する社内ルール策定のポイント

これからテレワークを導入する、あるいはテレワークに関する規則を策定するのであれば、各種法律も理解しておきましょう。経営者様の中には「オフィス外でのけがはすべて従業員個人の過失であり、企業に責任はない」とお考えの方もおられるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。労働基準法第9条では労働者の定義について『職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者』となっており、これを満たしていれば就業場所を問わず労働災害適用の対象となるのです。

 

厚生労働省では近年のテレワークの普及に伴い、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(※1)」を公布しています。本ガイドラインでは、テレワークの形態や導入にあたっての労働管理上の留意点のほか、ルールの策定と周知等が詳しく記載されています。まずは、ガイドラインの内容を踏まえたうえで草案を作りましょう。

業務災害の中には、労働災害として認められるか判断が難しい事例もあります。いざ事故が発生してから、責任の所在について従業員とトラブルにならないよう、テレワークを実施する企業は、あらかじめルールを明確に提示するのが好ましいと言えます。

■実際に事故が起きてしまったら…

まずは、従業員からけがの報告があったら事実確認を行いましょう。ここでしっかり把握しておくべき事項が先ほどご紹介した「業務遂行性」と「業務起因性」です。

 

<業務遂行性>

労働者が労働契約に基づいて、使用者の支配下にある状態のことを指します。支配下については、出張やテレワーク等の業務に従事している場合も認められます。

<業務起因性>

業務を起因とした傷病であること。傷病は外傷だけでなく、うつ病等の精神疾患も含まれます。

 

テレワーク中の事故であれば、就業中であることを証明するために、必要に応じてメールの送受信記録や勤怠管理システムのログを取得します。ログの確保や従業員からの聞き取りが終わったら、労災申請の手続きを進めてください。労働基準監督署の調査には積極的に協力しましょう。

一方で、テレワーク中の事故は労働災害にあたるかの線引きが難しい面もあり、自社で独自に従業員の事故やけがへの備えを行うことも選択肢の一つになるかと思います。例えば、全日本火災共済協同組合連合会の「傷害総合保障共済」なら従業員の万一のけがの補償を行うことが可能です。もちろん、オフィスでの業務や、テレワーク中のけがにも適用されますので、事故が発生した際に経営者様のサポートをさせていただくことが可能です。

■まとめ

コロナ対策の一環として急激に広まったテレワークですが、新しい労働の形態として多くの企業で定着していくことも考えられます。多様な働き方の実現は、従業員の定着率や満足度の向上にもつながる一方で、就業中に事故等が発生しないように注意を促す必要があります。

また、自社で従業員の事故が発生した場合の備えを行う際に、共済への加入も有効な手段となります。「共済・保険について相談をしたい」、「自社に最適な共済を案内してほしい」とお考えの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

※1 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html